ミスド少女

電車に乗っていた。自由が丘辺りでボクの隣に誰かが座った。空色スカートの隣人は座ると直ぐにトートバッグからミスドの箱を取り出した。そして電車が発車する時には既に食っていた。ドーナッツを。もぐもぐ音が聞こえて、腹が減った。アメリカンフルーツジュニアがあるのならおくれ、とボクは言いそうになって唾をゴクリと飲み込んだ。膝上に乗ったミスドの箱の隙間から、幾つかのドーナッツが見える。電車の中でミスドとは新発想だ、とか思いながらボクは中目黒で降りた。外から見ると、ミスド少女はまだもぐもぐしていた。