電気と萌えとオタクと

今日はじめて秋葉原メイド喫茶に行った。だいたい秋葉原に行くこと自体、三年振りだったので、美しく変貌した町並みと、その中に紛れ込んでいる時代遅れなジャンク屋との奇妙な協調性に驚いた。なんていうか、雑多で混沌としていて、それでいて全体的に強固な印象を受けた。まるで秋葉原は、電気と萌えとオタクを動力源とした、巨大なロボットの様だった。

メイド喫茶に行ったのは完全に興味本位のミーハーってやつだ(深層心理では一人くらい家にメイドが欲しいなどと思っているかもしれないが……)。


実は、言いにくいのだが、駅前で何人かのメイドがビラ配りをしているのを見た時、僕はメイドのブラックな一面を目撃してしまった。一人のメイドが、ほんの刹那、まるで電池が切れたように動きを止めたのだ。始終笑顔を振りまいてビラを配るメイドが、一瞬見せた人形の如き無表情……。地面を見つめるその目は、何を物語っていたのだろう。僕がその子の近くを通りかかると、すぐにその子は満面の笑みを浮かべ、甲高く甘ったるい声と共に僕にビラを差し出した。そして僕は当然それを受け取らなかった。少なくともあの子は自分の意思でメイドをやっているようには思えない。でなきゃあの表情は出せない。正直、僕がビラを受け取らなかったのは、彼女が怖かったからに他ならない。


メイド萌えとか言ってるオタク達は、何を求めてメイド喫茶に行くのだろう。あんな偽者だらけの歪んだ空間に何があるのだろう。メイドが心に内包している人間臭いモノに、ちょっとでも気付いているオタクはいるのだろうか。

まあ、色々釈然としない部分もあるが、秋葉原は結構好きだ。出来れば今度はメイドを一人お持ち帰りしたい。