気が付けばアウターゾーンに僕は居た

駅中のスーパーを通り抜けた際、果物売り場の前にのぼりがあったのだが、そこに書かれていた「ちくびんぼ」という文字に心を奪われる。よくよく見たら裏から見ていただけで本当は「さくらんぼ」だったのだが、よくよく考えたら乳首もさくらんぼも似たような色でどちらも二個一組なので、「ちくびんぼ」で正解なのかもしれない。
電車でどういうわけか二人組みのサラリーマンの間に座ってしまい、非常に気まずくなる。だがサラリーマンは僕を挟んで身を乗り出しながら構わずおしゃべりを続けている。「やくざを業界用語風に言ったら、ざーやくになるから座薬みたいで面白いですよねェ」「ああ、確かにそうだな。でももうひとつ捻りが欲しい所だな」サラリーマンと、僕と、サラリーマン。
電子辞書の広辞苑で、「広辞苑」という単語を調べた。載っていない。「広辞苑」って何だろう。
財布の中に一枚だけ夏目漱石が描かれた旧千円札があった。八枚の野口英世の中に一枚の夏目漱石が窮屈そうに混じっている。旧千円札を取り出す時、角度のせいなのか漱石さん、泣いている様に見えた。野口英世の横暴に僕も多少憤る。
丁度今、テレビの臨時ニュースで中田英寿の現役引退を知った。多分これもアウターゾーンの一部なのだろう。うん。