ナツナスとダツゴク

先日、ゼミ旅行で那須へ行った。
那須は寒い。借りた別荘は薄っぺらで寒く、秋雨に打たれて一日中ジメジメとしていた。ただそんな雨が似合うのが那須の良いところだ。林立する都会のビルの代わりに那須に立つのは本物の林だから、雨が逆に馴染む。濡れても構わないという気分で僕等は静かな街を探検した。そして夜は酒だ。買ってきたビールや焼酎をガバガバと胃に入れる。こういう時は豪快に呑むのが楽しみだが、僕は池波正太郎に倣って密かに右の肋の下にある肝臓を揉み解す。そうすると悪酔いをしないのだそうだ。お陰で他のメンバーが台所やトイレで青ざめている間、僕は布団でぐっすりと眠れた。

旅行から帰ると一気に疲れが出る。家に着いた途端に襲ってくる、あの肩に圧し掛かる漬物石のような感覚は一体何なのだろうか。ベッドに入ると今度は枕が漬物石に変化し、後頭部から眼球にかけて鈍重な痛みが襲ってくる。勿論、そんな状態では中々寝付けない。そこで僕は久し振りに大好きなルパン三世のビデオを観ることにした。寝むれないのならそれもまた良いだろうと、緑ジャケのファーストルパンが囁いたのだ。ビデオの一巻をビデオデッキに入れると、第四話の「脱獄のチャンスは一度」から物語は始まった。僕はそのエピソードが一番好きだったので、ビデオを観る度に第四話の冒頭まで巻き戻していたのだった。「脱獄のチャンスは一度」では、ルパンのおそろしく高いプライドを見る事が出来る。それは言わばルパンの本性であり、またファーストシリーズの面白さの本性でもあった。
そして僕は寝た。一人旅に出たり、友人とナンパをしたり、那須で飲んだり、ルパンに骨抜きにされたりした夏休みが、もうすぐ終わる。

LUPIN THE THIRD first tv. DVD-BOX

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