認識の煙

煙草が美味い季節になった。僕が思うに、喫煙者には個々のお気に入りの喫煙シーンがあって、その多くは冬である場合が多い。冷たい空気の中、認識しやすい冷えた煙が鼻腔を擽り、口から真っ直ぐ吐き出されやがて拡散する。その一本を消費するのにかかる時間が、決して無駄ではないと改めて感じさせてくれるのが、冬なのだ。
『朝のホーム』
僕は寝起きの一服をしない。起きてから数時間後、寒い中自転車で駅まで行き、電車が来るまでの数分を駅の喫煙スペースで愉しむためだ。朝の雑然としたホームで、多くのスモーカーが無言で煙草を吸う。喫煙者の一日はそうやって始まるべきなのだ。
『朝のタバコ屋』
僕がよく行くタバコ屋には、タバコの自販機が六つと灰皿が二つ設置してある。多種多様な煙草を、さながら博物館にでも居るような感覚で眺めながら吸う煙草もまた良い。そのタバコ屋のおばちゃんとの会話も楽しく、時には珍しい煙草を解説してくれたりもする。朝一で煙草を購入する際は、駅ではなくここで吸う事もある。
『賄いパスタと煙草』
バイトが終わり、店のカウンターで賄いのパスタを食した後、珈琲と共に吸う煙草も好きだ。この時間の為にバイトをしていると言っても過言ではない。猫談義や馬談義で時はあっという間に過ぎる。
『友達の家で飲み→コンビニへ買出し→帰り道に一服』
友達の家で飲んでいると酒や肴が足りなくなり、しばしば近くのコンビニへ買出しに行く羽目になる。その帰り道、静まった町中を数人で闊歩しながら吸う煙草が何故か美味い。寒くて早く屋内へ戻りたいと思う反面、その一本の煙草が永遠に無くならなければ良いのにと、思ったりもする。
『夜の縁側』
夜、丁度今くらいの時間に、部屋の窓を開けて縁側気分で本棚の横にある古い踏み台に座る。足なんか組んだりして、寒さに震えながら頑張って吸う。そうするといつもより気分が乗ってきちゃって、こんな駄文を書いてしまい、寝るタイミングを逃す事になるわけだ。
よし、一服しながらMOTHER3でもやるかな。