僕にしか乗れない列車

路地裏が好きだ。マウンテンバイクで頻繁に通るマイベスト路地裏には小さな食堂があって、そこにはいつも八匹くらいの大小様々からなる猫達が寝転んでいて、割烹着を着た食堂のおばさんが水を撒くと猫達は嫌々ながら移動し始める。そのすぐ先には小さな写真屋があり、フジフィルムの緑色の広告が色褪せて路地裏によく馴染んでいる。店の主人はというと暇そうに路上で将棋盤を出して駒を並べているのが常だ。
その路地裏は道が緩やかなカーブを描いていて、例えるならばそれはバナナの様な曲線なんだけれども、何故か僕はそこを通るたびに単なるバナナではなくチョコバナナを思い出す。おそらくその理由は、子供の頃に行った夏祭りの帰路から連想したものだと思う。チョコバナナ、綿あめ、焼きとうもろこし、当たっても倒れない射的、当たりもしないくじ引き、釣ったら一万円とか言われてやってはみたけどすぐに紙が切れる亀釣り。そんな夏祭りの楽しい思い出が、僕の中ではチョコバナナを連結部にして、路地裏と繋がっている。
これは僕にしかわからないイメージ。