近代能楽集と翻訳夜話

三島由紀夫の本は潮騒しか読んだ事がなかった。でも潮騒を始めに読んでしまったのはもしかしたら間違いだったのかもしれない。「その火を飛び越えて来い。飛び越えて来たら……」だったか、とても印象的な場面だけど、こういうのは言葉だけがモヤモヤと空間に浮かんでいる感じで僕の好きなジャンルではなかった。もっと言うと、恥ずかしい。しかし近代能楽集は僕の三島由紀夫に対するイメージを変えてくれた。先週購入して、既に三回は読んだ。それでもまだある種の畏怖のようなものをこの本に感じることが出来るのだから凄い。
あと翻訳夜話。村上春樹の翻訳に対する私見が対話形式で書かれているんだけど、彼の小説に対する姿勢なんかも見え隠れしてて面白かった。翻訳夜話2も購入しようと思う。なんたって題材がサリンジャーだし。
ただ三島由紀夫の本と村上春樹の本の読み合わせはやめた方がいいと思う。確か田口ランディが言っていたんだけど、食事に食べ合わせがあるように読書には読み合わせがある、らしい。読み合わせは十分に気を付けないと、食事のそれよりも深刻な事態に陥ってしまう可能性がある。例えば近代能楽集とノルウェイの森を交互に読んだら、僕なら死ねる。死なないまでも、まァ何か奇怪なアクションは起こしちゃうだろうな、無意識に。

翻訳夜話 (文春新書)

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