可愛いコックさん

残り物でパスタ作り。オリーブオイルが無く、ベーコンや野菜の類も無い。牛乳とバターと卵と、とろけるチーズがあったのでカルボナーラ的なものを目指す。何となく乾燥バジルを入れたり、期限切れの小さい鶏肉の欠片二個を冷蔵庫の奥で見つけたのでそれを入れたり、味見を繰り返しながら理想の味へと近づけていく。茹で上がった麺をソースの方へと移動し、軽く和える。入れ物だけは立派な黒胡椒をふりかけ、最終調整。見た目はちょっとお洒落なカルボナーラの出来上がり。
そして……食う。フォークとスプーンで食う。黒胡椒をガリガリと追加。また食う。舌に嫌なざらつきを感じる。味が薄い。失敗だ。まずくは無いけど全体的に空疎な感じ。見栄ばかり張ってる嫌な奴、って感じだ。
僕は料理を良くやるんだけど、いつもレシピなんか見ずに適当にやる。誰にも教わった事は無く、あるとすればバイトでマスターが作っているのを盗み見るくらいだ。後はその味を覚えて、家で実践する時の参考にする。料理の最中に思いついたら、順番なんてお構い無しで調味料を追加したりもする。料理に正しい順序があるとするのなら、僕はその順序をカンで当てていくのだ。1,2,3,4,5,6という順番があったとしたら最長で720通りも試さなくてはいけない(重複は除外するんだっけ)。始めの基本的な工程を除外したらもっと楽になるけど、それでも100は試す羽目になる。
そういった料理における回答を、簡単に知ろうとするのならレシピを見れば良い。でもそれは通信教育の空手のように、いざという時に役に立たないんだよね。僕はタモさんみたいになりたい。あんな風に気ままに料理を創造できる料理人になりたい。そしてそれは他の創造的な作業にも良い影響を及ぼしてくれるはずだ(それはタモさんを見れば一目瞭然だ)。だから今回はこの不味いパスタを、反省しながらちゃんと完食します。