細々とした雑記

きょう図書館に行ったら、仲良くなった図書館員の女の子に、君はもしかしたらこれが好きかもしれないね、などと言われて井伏鱒二の「文人の流儀」という本を渡された。コンパクトなハードカバーの本で白地に金の枠と黒の文字、手によく馴染む。中身は詩と随筆である。

ああ 蛸のぶつ切りは臍みたいだ
われら先ず腰かけに座りなおし
静かに酒をつぐ
枝豆から湯気が立つ
今宵は仲秋明月
初恋を偲ぶ夜
われら万障くりあわせ
よしの屋で独り酒をのむ

本を開くとまずこの「逸題」という詩の一辺が目に入り、たちまちこれの虜となる。ボクはすぐさまその子にお礼を言い、それを借りて帰った。帰り道に本屋で「へうげもの」を購入し、五時のチャイムを聞きながら初春の夕刻をチャリで疾走した。

文人の流儀 (ランティエ叢書)

文人の流儀 (ランティエ叢書)