少年地獄

一寸した嘘を諸所にばら撒いてそれを暗闇で見ると、ボォオっと蒼く輝いているので、「オヤマア、綺麗な蛍だこと」と安心しきって眺めていると、突然光達がザワザワと蠢きだして互いにぶつかり合い、みるみるうちに連鎖し輝度を増していき最期には大きな大きな爆発音と共に光が最高潮に達し、目の前が真っ白になって脳髄をやられ気違いと呼ばれるようになるのだ。そうなったらK大教授はやってくるわ、刑事、探偵は押し寄せるわで、残り少ない脳髄が零れ落ちてしまい実験材料となるのがオチである。
だから嘘は巧妙につくに限る。何故ならそれが真に優れた虚構ならば、それを嘘と呼ぶ者が本当の虚構吐きになるからだ。

少女地獄 (角川文庫)