東京静脈

小学生の頃、干上がったドブ川を友人と二人で歩いた事がある。ヘドロの鼻を刺すツンとした匂いと、車が吐き出す排気ガスの同時攻撃により、頭をクラクラさせながら必死で歩いた。上を見上げると、ドブ川に架かる何本もの細いコンクリート柱の隙間から、青い空や情緒あふれる町並みが時折顔を覗かせ、それが僕らの歩をいっそう進める事になった。小さな橋の下や交差点の下の長くて狭いトンネルを抜け、ズンズンと進んでいく。ヘドロに埋まったカラーボールを拾って、キャッチボールをしながら進む。途中、トンネルに鉄格子があり進めなくなったので、一旦上にあがりトンネルの向こう側までショートカットをすることになった。しかし、久々に上の世界に出ると、そこは既に知らない街だった。僕らは動揺した。
散々迷った挙句、僕らは引き返す事にした。今度はドブ側沿いに車道の端を歩いて。すると、すぐに見慣れた景色が視界に入ってきた。そう、たいした距離は歩いてなかったのだ。それだけ、ヘドロの道を子供が歩くのは過酷だったということだ……。


この思い出が印象深い理由は、上を見た時に視界に入る、雑多な町並みにあったと思う。桜の木や、張り巡らされた電線。綺麗な家が立ち並ぶ地域や、バラックが所狭しと建つ一角。そういう外部的、内部的な都会の汚さをいっぺんに、しかも地下から見上げるのだから面白いに決まっている。
そんな、普通に歩いていたら気付かない、知られざる都会の一面をもっとダイナミックに、そして情緒的に表現した映像作品がある。それが「東京静脈」だ。監督:野田真外、音楽:川井憲次、総監修:押井守
この通販ページをずっとブックマークしてたんだけど、買うの忘れてた。忘れかけていた昔話も書き残した事だし、そろそろ買うか。