階想

友人宅が廃墟

忍者屋敷みたいで楽しいぜ、とか言って遊び場になっていたT君の家が、当時(十年ほど前)の面影をそのままに廃墟になっていた。 T君の家は外階段が庇の上を通って二階部分に繋がっていたり、屋根の上に固定された自転車があったり、植物が色んな隙間から伸び…

ちんちんどんどん

さっき、久し振りにちんどん屋を見た。京都の舞妓さんみたいな格好をした二人の女性と、水戸黄門の八兵衛のような格好をした男の三人組だ。ずっとパチンコ屋の前にいたから、おそらくイベントの宣伝だったのだろう。女性がちんどん太鼓をかついで叩き、八兵…

たこやき詐欺

昔、田舎に旅行した際に、道端でたこやきを売っている屋台を発見した。看板には消えかけた赤ペンキで「たこやき」と書いており、屋台の中でラジオを聴きながら眠りこけているお婆さんが、どうやら店の主らしい。 僕はたこやきには目が無い。あれは確か高校生…

東京静脈

小学生の頃、干上がったドブ川を友人と二人で歩いた事がある。ヘドロの鼻を刺すツンとした匂いと、車が吐き出す排気ガスの同時攻撃により、頭をクラクラさせながら必死で歩いた。上を見上げると、ドブ川に架かる何本もの細いコンクリート柱の隙間から、青い…

ぼくのおじさんの足の裏の深い穴

確か中一の頃だったか。クラスの女の子に一冊の本を借りた。北杜夫の「ぼくのおじさん」がそれだ。内容はあえて書かないが、そのユルくも鋭い文章が紡ぎ出す、シュールでナンセンスな物語展開に、当時の僕はかなりの衝撃を受けた。 女の子に本を返す時、僕は…

ブラッドベリになりたくて

火星年代記は僕にとっての聖書であり、教科書であり、論語であり、心の友でもある。 僕は英語が出来ないので、小笠原豊樹さんが訳したハヤカワ文庫版を読んだのだが、面白さのあまり読了後は暫くの間茫然としてしまった。 二十六篇のオムニバス形式で綴られ…